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  No.29  2021.5

●主な内容

  1. 一般社団法人設立のご挨拶 <山崎 ちづ子>
  2. 山崎さんの思い出 <浅沼 久美子>
  3. 僕のアルプ <佐伯 雅視>
  4. 美術館のある街 <村田 良介>
  5. 大谷一良さんが描く、パッケージ
  6. 令和3年度北網圏北見文化センター美術企画展
  7. 企画展のお知らせ 開催中企画展「山崎猛写真展 一瞬万感」(2020.9.30〜2022.5.29)
  8. ボランティアの窓「熱」<川村 喜一(写真家)>
  9. ご寄贈ありがとうございました
  10. おしらせ
  11. 編集後記

一般社団法人設立のご挨拶         <山崎 ちづ子>


 アルプの林の木々も芽吹きが始まり、鳥達の囀りも一段と賑やかになりました。新しい季節の始まりは心も弾みます。

 昨年5月山崎猛前館長の死去に際しましては、多くの方々から励ましの言葉やお手紙、ご支援をいただきました。日々の雑務に追われて礼を失することも多くありました。この場をかりてお詫び申し上げますと共に改めてお礼を申し上げます。

 「1を2や3にするのは簡単だけど、ゼロを1にするのは大変な事なんだよ」とよく言っていました。その言葉通り、人のやらない事をコツコツと地道に時間をかけて作り上げていくことを喜びとする人でした。

 夢は形の無いもの…と思われがちですが、山崎の夢は頭の中に描いたものを形にすることでした。生涯を賭けてゼロから作り上げた美術館は故人の旧知の方々の御尽力をいただき、この度「一般社団法人」として運営していくことになりました。

 美術館を維持運営していくにあたり課題は山積しておりますが、ボランティアの方々や全国の当美術館に心を寄せて下さる方々に支えられて、山崎猛の夢を永くこの北の大地で繋いでいきたいと思っています。

 今後ともよろしくお願いいたします。

《北のアルプ美術館館長》

一般社団法人北のアルプ美術館 設立時役員

役 職

氏  名

備  考

名誉館長

午来  昌

名誉町民・元斜里町長

理事長

山崎ちづ子

北のアルプ美術館館長

理 事

小笠原 忍

NPO 法人こども遊学館市民ステージ

理 事

村田 良介

公益財団法人知床財団

理 事

佐藤 太勝

佐藤太勝法律事務所

理 事

江澤  昭

税理士法人北海道みらい

理 事

上美谷和代

北のアルプ美術館事務局長

監 事

山崎あずさ

AZ Style

 

 

山崎さんの思い出   <浅沼 久美子>


  私がアルプ美術館を初めて訪れたのは、 10 年ほど前、串田孫一さんのアトリエ再現が完成して間もない頃でした。ギシギシと軋む階段を上がると廊下を挟んで左右に絵画や彫刻が並ぶ部屋があり、昔学んだ学校のような佇まい。一瞬で気にいった場所になりました。

畦地梅太郎 絵葉書より
「山の家族」

 その後、ご縁がありランプの依頼を受けた時は、嬉しかったです。「私はアルプの煙突の形が好きでね?」と山崎さん。煙突?トップに付いてる四角錐の形の事でした。そう言われてみると電話BOXの屋根も同じ形です。ランプの形はすぐ決まり、細工する図柄は斜里岳や山に因んだ物、アルプに咲く花など、大島さんを交えてアレコレ考えた時間が楽しかったです。

 出来上がったランプをお渡しした時、30周年に向けての夢を語っておられました。アルプに対する情熱を静かな口調で話されていて、聞き漏らすまいと耳を傾けた暖かかった日の事も思い出されます。

 昨年から始まった山崎さんの写真展、その大きな流氷写真にも驚かされましたが印刷校正の段階の貴重な原稿に目を見張りました。細部にわたり厳しい微妙な色味指定の数々!光と影の美しさに満ち溢れた流氷の写真はこうして生まれたんですね。改めてアーティストとしての山崎さんに気付かされました。

 これから…もっともっと造形についてのお話もお伺い出来たのかと思うと、とても寂しいです。ありがとうございました。

《羅臼町/ステンドグラス作家》

 

 

僕のアルプ        <佐伯 雅視

 
 山仲間の友人が斜里にすてきな美術館があると教えられた。古い建造物が好きな僕はこの美術館に入った瞬間にものすごい衝撃だった。古いフローリングの床、ドア一枚にも風合いがあり、前庭の白樺林も素晴らしい。2002年ころ地元の版画家の作品を展示する荒川版画美術館を造ったのもアルプの影響力が強かった。古いサイロの円形を利用した美術館に山崎猛館長が来てくれたのは開館後数年たってからのことか。中標津にもこんな素敵な場所があると皆さん宣伝してくれた。

 僕は北根室ランチウェイというトレイルをこの地に作った。日本ロングトレイル協議会という組織に加盟した。協議会のメンバーは元山と溪谷社の編集長やカラコラム遠征隊の隊長など山仲間の団体だ。ある時、仲間を美術館に連れて行った。元編集長の節田重節氏は串田孫一さんの再現された書斎の前で言った「串田さんが原稿を書き上げるのを待っていたのだ」と。また節田さんの仲人が串田孫一さんだった。偶然の出会いに節田さんも山崎館長も驚きの表情だった。

 その後何度もアルプに行くたびにコーヒーを入れて僕を招きいれてくれた。数年前にアルプの庭にあったバラの小さな苗をいただいた。春は芽吹きの葉の色で楽しみ、夏にはちいさな可憐な花をつけ秋には赤い実をつけ、実はローズヒップのお茶に。大きく育ったバラの実から育つ苗、そのバラは中標津のたくさんの人達の庭に増えつつある。館長がまいた種のように。山崎館長がたくさん厚い板を中標津の材木屋さんから購入し中斜里の倉庫に保管していたのを僕は見ていた。まだまだ何か次の夢を追っていたに違いない。

中標津町/佐伯農場荒川版画美術館》
 

 

美術館のある街      <村田 良介


  私が生まれて間もない昭和33年3月に創刊された山の文芸誌アルプは、昭和58年2月に300号で終刊しました。山の虜になっていた学生時代は登山の技術や頂上にばかりに目が向いていたせいか、私がアルプを知ったのは斜里に来て山崎さんとお会いしてからです。

 若くしてアルプの世界に魅せられた山崎さんは、家業の傍らご自身もオホーツクの流氷や日本じゅうの灯台を写真家として表現し続けました。また、アルプの意思を伝えるべく平成3年に「北のアルプ美術館」を開設し、館の運営を軌道に乗せ、若者たちと夢を語る日々をおくる中で開館30周年を目前にご逝去されました。

 間もなく1周忌を迎えますが北のアルプ美術館は主を失った悲しみに沈むことなく、遺志を継いだご家族や仲間の下で新たなスタートを切っています。「アルプ通り」からの佇まいも廊下のきしむ音もこれまでと何も変わりません。ただ、美術館の年輪がまた一つ刻まれ、庭の木々も新緑の季節を迎えて幹をさらに太くしているはずです。

 美術館は私たちが生きていく上で欠かせない文化や芸術を発信する場所です。文芸という視点から山や自然に向きあったアルプの人たちの世界感がここに込められています。知床ではとかく目の前の動物や植物や景色に目を奪われがちですが、この地には木々に囲まれて誰もが心の目で山や自然を感じることができる場所もあるのです。

 美術館のある街を誇りに思います。

《斜里山岳会》


 

大谷一良さんが描く、パッケージ

「春を待つ日」2004
 北海道札幌の洋菓子屋「きのとや」から冬期限定の生チョコレートサンドクッキー「 スノーサンド 」が新発売され、その商品パッケージに山の文芸誌「アルプ」の表紙を飾った故・ 大谷一良 さんの版画2作品が採用されています。店頭でもオンラインショップでもすぐに 完売する人気で話題になりました。 ※今季の販売は終了

 お菓子の栞には「北のアルプ美術館館長 山崎猛」への感謝の文字も記載されています。

 

「早暁の谷」2003

  パーケージに興味を持ち、当館のホームページから絵葉書を購入される方も多くなり、作品のファンが増えとても嬉しく思います。北のアルプ美術館でも大谷さんの作品を数多く所蔵しておりますので、こちらにも機会があればぜひ お立ち寄りください 。

 

 

令和3年度北網圏北見文化センター美術企画展


 北網圏北見文化センターの企画展として「北のアルプ美術館」を紹介していただくことになりました。当館が所蔵する資料や美術作品を展示、又山崎猛前館長の足跡を偲ぶ写真の展示も考えているようです。

当館とは違ったダイナミックな展示を楽しんでいただけると思います。

近隣にお住まいの方はぜひ足をお運びください。

 尚、コロナ禍での企画ですので、内容の変更や中止となる場合があります。日程が近くなりましたらお問い合せいただくかホームページ等でご確認ください。

「北のアルプ美術館コレクション展」(仮称)
2021 年7月 17 日(土)〜8月 22 日(日)

【連絡先】 北網圏北見文化センター

北海道北見市公園町1番地  電話: 0157-23-6700

 

 

企画展のお知らせ


■開催中企画展「山崎猛写真展 一瞬万感」 2020.9.30(水)〜2022.5.29(日)

 

 

ボランティアの窓

「熱」               川村喜一(写真家)

 山崎猛さんはいつも北のアルプ美術館で私たちをあたたかく迎えてくれた。山崎さんは私が知床で暮らしながら撮影した写真について想いを語ってくれ、私はまた、山崎さんが写してきた数々の知床の情景を聴いた。

 長年オホーツクの流氷を撮り続けてきた山崎さんは、壮麗なる流氷が訪れるその前兆に、万物がぎゅっと冬支度をする“かまえ”を聴いたという。幾度となく同じ森へ足を運ぶなかで、木が朽ち、その隙間に差す陽光の下で、新しい草木が芽吹いてゆくさまを見つめたという。四季に感応し、色付き、色褪せながら巡ってゆく命の動態があり、そこに身を浸した私たち自身の“かまえ”がある。それが此処で写真をやる者の持つ“歌ごころ”だと彼は言った。

 別れ際、私たちは決まって握手を交わした。「よかった。よかった」と言って差し出してくれる山崎さんの手は分厚く、力が漲っていて、あたたかかった。新型コロナウイルスがたった一年のあいだに人々の関わり方を変えてしまった今も、その手の感触が、言い表しようのない熱が、確かに私の中に残っている。

 今、私たちは企画展の準備や倉庫の整理といった形で北のアルプ美術館をお手伝いしている。一枚の写真や、その連なりが、背後にある撮影者のかまえをありありと語り得るように、ここに集められた作品や、道具、その配置一つ一つから、私たちは山崎さんの意志をなぞることができる。この美術館に集い、語り合い、支え合ってきた多くの人々の熱を感じ取ることができる。

作品搬出時のボランティアの方々

 北のアルプ美術館は、いつも私たちをあたたかく迎えてくれる。斜里岳の麓に、知床半島の根もとにたたずむ北のアルプ美術館が、この地の文化の礎としてこれからも発展してゆくことを心から願う。

 

 

 

 

■ご寄贈ありがとうございました(順不同・敬称略)


岡部洋子・杉原鉄夫・須藤孝志・渡辺洋一・高澤光雄・萩生田浩・佐々木勉・野呂重信・山下康一・工藤和男・菊地慶一・岡田朝雄・佐伯雅視・山室眞二・片山弘明・浦野美弘・角田静恵・安田智哉・水越 武・熊谷 榧

▲▲ その他各地の美術館、博物館より資料や印刷物等をお送りいただきました。

 

◆アルプ基金・寄付金報告− 2020年6月1日〜2021年5月31日

690,378円となっております。

  ご協力、ご支援に心より感謝とお礼を申し上げます。

 

 

■おしらせ


▲▲2021年12月1日(水)〜2022年3月1日(火)まで冬期閉館します。

▲▲ 当館では、活動のサポートをしてくださるボランティアの方を随時募集しています。男女問わず、一日だけのお手伝いでもOK!関心のある方、希望される方は当館までお気軽にお電話下さい。お待ちしています。

▲▲ 新たに「友の会」などの創設を準備しております。まだ具体的に決まっていませんが、 詳細が 決まり 次第、 順次 お知らせさせていただき ます 。

 

 

編集後記


ベニヒワ(4/10)・美術館前庭にて

▲ 前館長亡き後、 不安 を抱えながら日々の活動でしたが、ボランティアの方々に 草取りや掃除、展示替え、倉庫の物品移動等、様々な場面でご協力いただき、1年を無事に 乗り越え ることが出来ました 。改めてお礼申し上げます。来年は美術館開館 30 周年を迎えます。次回の企画展は生前山崎猛館長が 30 周年に合わせて温めていた展示を予定していますので、どうぞご期待下さい。

新たな体制でスタートするにあたり不安な面もあり大変緊張しておりますが、今後ともよろしくお願いいたします。 ( 事務局・上美谷 )

 

 

  No.29 2021年5月発行(年1回)
 編 集:大島千寿子/村田良介/上美谷和代  題 字:横田ヒロ子
 発 行:一般社団法人 北のアルプ美術館
 〒099−4114 北海道斜里郡斜里町朝日町11−2
 TEL O152−23−4000 / FAX 0152-23−4007
 http://www.alp-museum.org  メールアドレス:mail@alp-museum.org

 

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