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  No.7  1999.6

●主な内容

  1. 北のアルプ美術館(寄稿・有田忠郎・詩人・福岡市在住)
  2. 一年間の出来事 1998.6〜1999.5
  3. ご寄贈ありがとうございました
  4. 創文社の本−ご案内
  5. 「岳人」の表紙を彩る大谷一良さんの版画
  6. 新婚鳩のお引越し?!
  7. 山男の父、逝く
  8. 美術館の新モニュメントが完成しました。
  9. 細川順三&山崎祐介 フルートとハープの夕べ
  10. 感想文集
  11. 入館者の記録・編集後記

北のアルプ美術館

 釧路からJR釧網線に乗り、斜里駅で下りる。少し歩けば、そこはもうオホーツク海だ。冬になると一面流氷に覆われる海も、秋の今は少し暗い色で緩やかに広がる網走湾をかたちづくっている。東へ歩くと、閑静な住宅街に出る。そこに、白樺やナナカマド、ライラックなどの樹木が植えられた広い庭園をめぐらして、瀟洒な二階建ての建物があった。緑の屋根、青みがかった板張りの外壁、煉瓦造りの煙実。ヨーロッパの田園風の家である。入口に「北のアルプ美術館」の標示。中に入ると、二階に展示室が六つ。資料室と収蔵庫が一つずつ。階下はロビー、管理室、応接室、図書室になっている。
 ……と、見てきたように書いてしまったが、私は斜里に行ったことがない。たまたま荒賀意雄氏の『落日の山』(ナカニシヤ出版)を読んでいて、この美術館の存在を知ったのである。著者によれば、ここは何十年かの昔、雑誌『アルプ』を手にして、その実しい世界に感動した青年が、やがて道東有数のOA機器販売会社の社長になった時、私財を投じて『アルプ』関係の資料や美術品を収集・展示するために設けたのだという。
 『アルプ』は昔、私も好きで毎月のように買っていた。串田孫一氏が編集の主軸となり、一九五八年に創文社から創刊された月刊誌である。一九八三年三○○号で終刊となるまで、多くの詩人、作家、エッセイスト、画家、写真家の寄稿を得て、山や旅の愛好家を引きつけた。創刊号の後書きには、こんなことが書いてある。
 「ここに創刊された『アルプ』の性格については、私どもは何も宜言しない。ただ、雪線近いその草原が、人の住む町の賑わいから遠く静まっているように、『アルプ』もいわゆる雑誌の華かさや、それに伴う種類の刺激性などからは距ったものだとは言えるし、自から願っている方向も決まっている。」
 余計な解説を加えるのは『アルプ』の性格そのものに反することであろう。ただ、時とともに私の手元から散逸したバックナンバーを、最近古書日録を頼りに収集し始めたことだけ書きとめておきたい。
 『落日の山』を読んだあと、「北のアルプ美術館」に問い合わせの手紙を書いたところ、美しい案内書や地元の新聞に掲載された紹介記事のコピーが送られてきた。美術館を設けた山崎猛氏は、流氷を撮影する写真家としても知られた人だという。知床半島の入口でもある斜里の町を、いつの日か訪ねてみたいとしきりに思う。

有田忠郎(詩人・福岡市在住)

*この文章は、同人誌「乾河 第24号(1999年2月1日発行)」に掲載されたものです。
  アルプファンである有田氏が、当館への想いを綴ってくださいました。

一年間の出来事  1998.6〜1999.5

1998. 7. 3 美術館コンサート
      「フルートとハープ アルプの夕べ 森の響きに包まれて・1998」
      2F展示室にて開催、39名が参加
   8.29 斜里で大雨〜町内で数ヶ所通行止め
   9. 2 アサマフウロウ咲く
      長野県・高山村の大高慶子様からいただいた苗を
      昨年11月に移植濃い赤紫色の花びらが開いた
   9.21 斜里で最も遅い真夏日を記録(網走で31.6度)
   10. 4 大雪山系にようやく初雪、平年より11日遅く
      斜里岳、羅臼岳でも初冠雪
   10.初 白鳥の第一陣が飛来
      鮭の遡上が始まる
   10.10 臨時休館(〜10.20まで)
   10.21 15,000人目の入館者来館
   11.12 斜里で初雪
      美術館前庭の冬囲い作業(11.14)
   11.初 1F玄関口ピーに暖房機設置〜暖かくなりました
1999. 1.16 流氷接岸(斜里町ウトロ)
   4.12 斜里海岸で蜃気楼(午後1:40頃)
   4.13 美術館前庭のクロッカス咲く
   4.16 海明け宣言
   4.21 美術館前庭の水仙咲く
   5. 5 16,000人目の入館者来館
   5. 7 桜開花

■ご寄贈ありがとうございました


▲斜里に根を下ろしたアサマフウロウ

心より御礼申し上げます(順不同・敬称略)

安達修/永野英昭/津田清子/小野木三郎/手塚宗求/松田雄一/田中清光/安田信子/樽見佐吉/田淵穂高/尾崎喜八研究会/小川隆史/畦地梅太郎/山室眞二/西常雄/土澤彰/大高慶子/石田二三夫/一原有徳/有田忠郎/大澤輝幸/川添英一/みすず書房/(株)創文社/(株)平凡社/(株)白山書房
※全国の博物館、美術館から資料や印刷物等をお送りいただきました。ありがとうございました。

■創文社の本−ご案内


▲あの頃の感動が心に甦る−創文社の本

 昨年秋に待望の復刊となった辻まことの「山からの絵本」。当館でも販売を始めたところ、来館者の方々に大変ご好評をいただいております。この他にも皆様の心に残る創文社の名著を取り揃えております。

■「岳人」の表紙を彩る大谷一良さんの版画

 1999年1月号から、大谷一良さんの版画が山の情報誌「岳人」の表紙を飾っています。その号の季節にちなんだ幻想的な山の版画を見ることが出来ます。毎号目次頁には、作者の作品のイメージや山に対する想いの伝わる文章も掲載されています。

■新婚鳩のお引っ越し?!

 美術館前庭の藤棚に、ヤマバトの夫婦が営巣をしています。これまでも度々美術館に遊びに来ては、湧き水でのどを潤し、銀杏の枝で羽を休めていました。あまりの居心地の良さに移住を決めたのでしょうか。かわいいヒナの声が聞ける日が、今から楽しみです。

■山男の父、逝く


 ▲畦地梅太郎「わかれ」

 1999年4月12日、版画家・畦地梅太郎さん(96)がご逝去されました。多くの山男から愛された、ぬくもり溢れる山の版画は、いつまでも色あせることなく、山男の心にいつまでも残り続けることでしょう。心よりご冥福をお祈り申し上げます。

美術館の新モニュメントが完成しました。

 静かにお客様をお迎えします

 美術館の目印ともなっている、敷地入口に設置されているモニュメント。開館以来、皆様に親しまれてきましたが、老朽化にともない今年5月に新しく生まれ変わりました。6年間親しまれてきた木製のモニュメントは、ここに暮らす虫たちにすっかり愛されてしまい、土台となっていた木材が朽ちかけていました。そのボロボロになった木材を割ってみると、中は空洞だらけ。そこにはなんとクワガタ虫やカブト虫の幼虫がたくさん眠っていました。虫のアパートと化した古いモニュメントは、そこで静かに成長している幼虫たちが巣立つまで、別の場所で保管されることになりました。新モニュメントは、雰囲気も一新して自然石を使用し、知床の山並みがイメージされています。以前のものよりも大きくなったので、美術館前の道路を走る車からも見やすくなりました。

細川順三&山崎祐介 フルートとハープの夕べ

 お二人をお迎えして今年で3年目となる、フルートとハープによるコンサートです。今回は、昨年10月にオープンしたばかりの斜里町公民館ゆめホール知床にて開催いたします。斜里公演の翌日は、おとなりの清里町での公演が決定しており、二夜連続で楽しむことも出来ます。

◇斜里公演 7月21日(水)開場18:30/開演19:00 ゆめホール知床ホワイ工
◇清里公演 7月22日(木)l開場18:30/開演19:00 プラネット'97小ホール
  料金〜大人1,000円(当日1,300円)、高校生以下500円(当日800円)
  2日連続券1,800円(大人・前売りのみ)

*お問い合わせは…北のアルプ美術館(01522−3−4000)まで

感想文集

8/1 落ち着いて静かなこの時に音楽を聞きながら素晴らしい作品を目にして感動しました。白樺に囲まれた美術館、とても素敵です。
又、是非来たいと思います。(札幌市・MT)

5/2 一度来て見たいと思っていた北のアルプに来ることが出来ました。予想っ通りの安らぎのある美術館です。ありがとう。

5/20 青春の頃“アルプ”を愛読しておりました。
書棚から再び取り出して近日中にあの頃に戻ってみたいと思います。のんびり来れる日いつの日か、再訪楽しみに生きていたい。(鷹栖町 T)

5/9 思いがけない上質のあたたかい美術館にめぐり会いました。作家の生原稿を目にして感動しています。
文章の書き出しの勉強になりました。(M)

7/22 とても素敵な空間です。とてもきれいで、大切にしているのがよくわかりました。又、今度、時間をたくさんとって来たいと思います。
耳に心地よく入ってくるこの音楽も心をなごませてくれますね。
本を読みに、音楽を聞きに、又ゆっくりと訪れます。(網走市 T・Y)

8/29 日本一周の途中でよりました。いろいろな景色をここでも見ることが出来ました。(横浜より)

8/26 自然の美しさを忘れかけていた私に、不思議なパワーをくれました。(RM)

8/1 6月に来たのですが休館中で残念なことでした。今日は念願がかなって入館できました。想像を超えた素晴らしい内容に、唯々感動しました。
貴重な資料を無料で公開して頂けるなんて、本当に有難いことで感謝の言葉もありません。ありがとうございました。(北見市 TS)

5/1 初めての北海道の旅で、初めて案内頂いた美術館が当美術館でした。どの作品も、言葉を発しないだけで“生”を強く感じました。アルプの意味も館内の雰囲気も実にやすらぎを与えてくれました。

入館者の記録・編集後記

編集後記◆おかげさまで喜びの7周年を迎えることが出来ました/心より感謝申し上げます/陰ながら美術館の設立、運営を支えて続けておりました当館館長の妻・三津子が昨年10月逝去いたしました/北の大空に輝く星となって、いつまでもこの美術館を見守っていてくれると思います/皆様からいただきました励ましのお言葉を胸に、これからも頑張りますので、よろしくお願い申し上げます(S)

  No.7 1999年6月発行(年1回)
  編 集:山崎 猛/山崎 忍      カット:桜井あけみ
                     発 行:北のアルプ美術館
  〒099−4114 北海道斜里郡斜里町朝日町11−2
  TEL O1522−3−4000/FAX3−4007

 

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