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  No.5  1997.6

●主な内容

  1. 流氷、そしてアルプ(寄稿・高知県山岳連盟副会長 小松長三)
  2. 5年間のあしあと 1192.6〜1997.6
  3. ご寄贈ありがとうございました
  4. 入館記念絵ハガキが新しくなりました。
  5. クロッカスが咲きました
  6. 訂正とおわび
  7. 小さな美術館(新聞記事から・旭川実業高校副校長 伊井 温彦)
  8. 感想文集
  9. 総入館者数・編集後記

流氷、そしてアルプ

高知県山岳連盟副会長  小松 長三(高知市)

 “オーロラ輝子”。この四月まで放映されていた、TVドラマの役名をまだ憶えている人はけっこう多いと思う。
 死の床にあった彼女が、枕の下から愛用の手鏡を取り出して、気心の通じ合った少女マミに形見として手渡すシーンがあった。手鏡の裏には「オホーツク公演記念」とあり、薄幸の彼女が一番幸せだった時期の想い出の品である。同時に流れる回想シーンは、オホーツクの流氷のせめぎあう姿と、その流水どうしが発する哭突く音であった。
 このようなホームドラマのひとつのヤマ場とも云える場面に使われる“オホーツク・流水”とは、たぶん多くの日本人にとっての原風景とも呼べるものではないだろうか。
 今、六月。流水の去った初夏の海には、芳しい緑の風が吹き抜けていることと思う。
 流水の身震いするような光景を切り取った写真集「氷海」を出された山崎さんと、氏の私設になる「北のアルプ美術館」に出違ったのは昨年のことである。昨夏、私にとっては二度目となる知床行の主目的は「北のアルプ美術館」を訪ねることにあった。そこには創刊当時の二十二才から四十七才終刊時までの二十五年間、私のすべてに深く係わった「アルプの世界」が、終刊後十五年近くも経つというのに当時のままに息づいていた。
 遥か南の島より流れつく椰子の実のように、ひとつの時代から流れ去ろうとしていた「アルプ」が、日本列島の北端に近いこの海辺の町斜里に、みごとに留められているのをみて感動した。ただただ山崎氏の熱き想いに打たれるのみであった。
 昨秋、高知出身の画家で、冬の知床や北の白い風景を追い続けておられる小松明画伯の個展が高知市で開催された。山崎氏もその折に来高され、−夕お逢いする機会を得ることができた。流氷、斜里。黒潮、高知。北と南、遠く離れ「アルプ」の存在が無ければお互い話し合う機会もなかったであろう二人。知床、自然、アルプのこと等、少年のように心躍る会話の一刻を共有することができた。更には話の中で二人共、長女に「あずさ」と名付けていたことが判り唖然とした。
 私達の世代にとって「アルプ」とは一体何であったのか…。単に“山の文芸誌”といっただけのものではなかったように思う。
 今春の流水は、計画はしていたが都合で見に行くことができず残念だったが、「氷海」の中の風景を一つでもよいから是非自分の眼で見たいと思う。そして流水がぶつかり合い、軋みながら出すという音、氷の哭く声も開きたい。
 もしかして氷音に混って、過ぎ去った青春の遠い音が聞こえてくるかもしれない…。

5年間のあしあと    1992.6〜1997.6

1992. 6.13 開館
1993. 1.15 釧路沖地震
   1.16 年賀状展
   2.10 今井雄二・喜美子コーナー設置
   4.28 戸川幸夫油彩及び著書コーナー設置
   7.12 北海道南西沖地震
   10.20 荒賀憲雄山の詩集「霧の中に」詩稿及び原画展
1994. 2. 5 串田孫一限定本と書簡収蔵展示
   4.13 小さな古いピアノ到着
   4.27 木口木版画とデッサン画「山の道具」展(〜6.28)
      2周年特別企画展 栗田政裕木版画・中屋稚義デッサン画
   6.18 人館者5千人達成
   6.30 串田孫一作品展(〜8.30)
      熊谷榧水彩画展(〜8.30)
   7.10 特別展示 限定版「山のABC」展(〜1995.6.10)
   10. 4 北海道東方沖地震 被害を受け閉館(〜11.2)
1995. 1.21 第13回日本山書の会北海道集会「北海道の山と文学展」
   6.14 アルプ女流作家二人展 宇都宮貞子・岩見禮花(〜8.27)
   9. 6 アルプ銅版画展・串田孫一限定版著書展(1996.4.28)
1996. 2. 1 知床グランドホテル「ギャラリー・コタンクル」にて
      小松明「白い孤愁」絵画展(当館収蔵作品による)
   3.30 入館者1万人を記録
   5. 1 書票展−もうひとつの本の楽しみ(〜8.11)
   7.27 小松長三棟より斜里町立図書館ヘアルプ全巻寄贈
   8.14 尾崎喜八展(〜1997.4.13)
   9.17 創文社よりアルプ4,809冊寄贈
   9.28 大雪山系初冠雪
   10.12 涛沸湖にオオハクチョウの群れ飛来
   11.28 北海道美術館ガイド(北海道新聞社刊)で紹介される
1997. 1.23 知床半島に流氷接岸
   3. 8 第1回ポカラ塾「知床流水焚火塾」開催(〜3.9)
   4. 5 クロッカス咲く
   4.16 −原有徳展−アルプと北海道の山(〜9.28)
   5. 7 桜開花
   6. 8 ライラック開花(開館した年も6月8日に咲いていました)

■ご寄贈ありがとうございました

新 刊 書

北海道の旅/串田孫一
(平凡社ライブラリー)

  心より御礼申し上げます(順不同・敬称略)

石田二三夫/林幸夫/畦地梅太郎/岡野谷誠/佐々木昭夫/ 安田信子/熊谷榧/西常雄/大洞正典/永井正/永野英昭/尾崎栄子/田中清光/小松長三/平井毅/嶋本茂男/小野有五/北川貢/下川久美子/三宅修/田中良/坂本二郎/山室眞二/木村玲子/柳町富美子/大森久雄/小川隆史/畠山良三/松田雄一/手塚宗求/河村勁/田村宏/一原有徳/高澤光雄/串田孫一/山田充/津田清子/田淵行男記念館/北海道新聞出版局/尾崎喜八研究会/大阪芸術大学芸術学部文芸学科研究室/平凡社

*「アルプ」の出版社だった創文社様より、4,809冊ものアルプのバックナンバーをご寄贈いただきました。有効に活用いたします。
*大内秀一棟よりFM東京でオンエアされていた「音楽の絵本」の錬音テープをご寄贈いただきました。

■入館記念絵ハガキが新しくなりました


大谷一良「しれとこすみれ」

大谷一長氏の限定版の版画集「山の花」より、しれとこすみれの絵を使わせていただきました。花びらの白と黄色が優しい一枚です。来館された方全員にお渡しいたします。

■クロッカスが咲きました


クロッカス

串田孫一夫人から長野県高山村へ、そして地の涯北のアルプ美術館の庭へとやって釆たクロッカス。まだ日陰に雪が残っていた1997年4月5日、寒さに耐えながら美しい花を咲かせました。気候のせいでしょうか、高山村より紫色が濃いように感じました。

■訂正とおわび

当館で販売しております美術館案内のしおりに掲載されている緯度・経度に誤りがありました。ここに訂正し、おわび申し上げます。
(北のアルプ美術館の位置)
北緯43度54分24秒、東経144度40分48秒

小さな美術館(新聞記事から)

旭川実業高校副校長  伊井 温彦

 たまたま昔の親しい仲間の集まりが、北の温泉であるとの便りが届いた。久し振りのオホーツクへの旅である。心はときめき少年の思いで車を駆った。前日あまりの懐かしさに、友と北見、斜里、網走、常呂を巡った。
 眼の当たりに見るオホーツクの自然、とりわけ春霞にけむる知床連山、峨々たる斜里岳は、前景の広漠たる雪原のかなたに美しかった。
 友は斜里の町のとある「小さな美術館」へ案内してくれた。雑木林の中の西洋館風の建物はオホーツクの風土に映え、春の日差しがまぶしい。建物に入っての驚きと感動を覚えた。今までこれほど心のこもった、心を打つ美術館があっただろうか。
 展示の一つ一つに何気ない気の配りようがある。山の美術館の名にふさわしく、山の本、山の絵、山の版画。そして串田孫一さんの著書のほぼ全て、直筆原稿などなど。オホーツクの小さな町にある「小さな美術館」がなぜこれほどまでに私に感動を呼び起こしたのだろう。
 今は「情報化時代」。マルチメディア、コンピュータグラフィックスは全盛を極めている。でも、真に大切なものは「人の心」である。この小さな美術館は、私にそれを教えてくれた。その名は「北のアルプ美術館」という。
  帰路、冬の名残りの流氷が顔を見せ、常呂川ではオジロワシが、傾斜面の雑木林からは六頭のエゾシカが、優しいまなざしで私たちを見送ってくれた。
(北海タイムスより)


感想文集


高地在住の小松長三から斜里町の図書館へアルプ全巻が寄贈されました。より多くの方にアルプをと願っています。

11/2 昨日横浜を出て特急を乗り継ぎ、今朝釧路に着きました。都会を脱出して釧路湿原でボーッと時を過ごし、ふと降りたった斜里でこんなにステキな美術館に出会えてラッキーでした。私も廊下にある斜里岳と十勝連峰の絵が気に入りました。今度は斜里岳に登りに来ようと思います。(YN)

8/7 尊敬する作家で詩人の直筆に接して感激いたしました。文を為す人は画や書まで為すのにもいたく感心しました。内容的に第一級の美術館です。この館がいつまでも維持されることを心からねがいます。(KN)

3/7 斜里って素敵な町ですね。
山がきれいだし、街の雰囲気も、なんかいいし。
こんなシャレた空間(この美術館のことです)もあるし……。
これからも、ここにしかない自然とともに、斜里らしい素敵な個性を守ってほしいと心から願ってます。(札幌・M)P.S. また来ます!!

11/20 とっても好きな場所です。ゆったりのんびりほんわかします。
いつまでも続けていってもらえたら嬉しいです。
この美術館の1ファンとして応援させていただきます。
素敵な空間をありがとう。(神奈川県・YK)

8/31 古くからのアルプのファンです。
念願かなってやっと来れました。
懐かしい顔と、本に会えて、感謝します。(旭川・RY)

総入館者数・編集後記

総入館者数
1997.6.13現在
12,354人
町内  12.3%
道内  72.4%
道外  15.3%

編集後記◆多くの方々に支えられて5周年を迎えられましたこと、心より感謝申し上げます/これまで緑風に寄稿してくださった方々、ありがとうございます/当館について、アルプについて、山についてなど、緑風に寄せていただける文章をお待ちしております/この5周年目を楽しみに待ってくださっていた源高根先生のご冥福をお祈りいたします(S)

  No.5 1997年6月発行(年1回)
  編 集:山崎 猛/山崎 忍       発 行:北のアルプ美術館
  〒099−4114 北海道斜里郡斜里町朝日町11−2
  TEL O1522−3−4000/FAX3−4007

 

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